『骨を彩る』感想・あらすじ(ネタバレあり)彩瀬まる

こんにちは。読書ブロガーのjikuasi(@jikuasi)です。

本日ご紹介する一冊はこちら!

見て見ぬふりをして、喪ったと思っていた、あの人、あの記憶、あの言葉が今、降り注ぐ――。

何も喪わず、傷つかず生きている人なんていない――。
色彩をなくした過去、記憶、日々に、あらためて向き合い、彩ってゆく希望の物語。

妻を喪い、少しずつ妻のことを忘れてしまっている自分に気付く夫――「指のたより」、恩師の葬儀に現れないかつての友人との過去のやりとりをたどり、今彼女に何かを言わんとする女性――「古生代のバームロール」、息子がいじめられているかもしれないという不安を抱えながら、自身の過去の記憶に向き合う母親――「バラバラ」、ゲームの中でしか雄弁になれない童貞――「ハライソ」、転校生のある宗教を信仰している少女と出会い自分たちを苦しめる”普通”について模索する、母親を喪った少女――「やわらかい骨」

登場する人たちは皆、心のどこかで骨がひっかかっているような、自分の骨が足りないような、何か不安定な喪失感を持っています。その喪失感は、不思議と読者にヒタヒタと浸透し、やがて「私には、ここに穴があったんだ」と、心の沁みのような喪失感を気付かせます。この物語は、読む人によって涙する場所が違う、不思議な物語です。ただ、読後に残るのは鮮やかな希望。注目の新鋭による希望の物語をお届けします。
amazonより引用

 

5編からなる、短編集です。

それぞれに出てくる登場人物が過ごす日常の心の喪失を描いています。

 

各話あらすじ

1.指のたより

10年前に妻を喪った、津村。
妻のことを愛していた。

けれど、少しずつ妻の顔や、しぐさや表情を忘れていく。

妻に対する申し訳ない罪悪感が心のなかに漂っていく。

 

いい関係を築けている女性もいる。いつも夕食を買いに行っている総菜屋の娘。

綺麗で、笑顔が素敵で、気立てのよい女性。

再婚相手としても、申し分なかった。ある一点を除いては…

 

そんな折、亡くなった妻が頻繁に夢に出てくるようになった。

夢のなかの妻は、なぜか指の本数が一本、二本と減っていく…

 

2.古生代のバームロール

 

光恵は、高校時代の恩師が亡くなった知らせを受けて、同窓生達と葬儀を取り仕切ることになった。

そこで昔仲良くしていた友達真紀子からは、参加の返事は来なかった。

そんな折、紹介を受けて入った詐欺まがいのエステ店で、いかにもいかがわしい源氏名を名乗り、カリスマエステティシャンとして振舞う真紀子と再会する。

 

3.ばらばら

 

昔から、スポーツも出来て勉強も出来る優等生。現在は銀座の高級腕時計ショップのオーナー。

家事も子育ても完璧にこなす、玲子。
そんな折、学校で息子がいじめられている様子を感じ取る。

その後、気分転換をしてきたらという夫の勧めで、仙台へ1人、足を伸ばすことに。
息子の、「ママが怖い」という言葉が頭のなかでぐるぐると回る。

仙台へ向かう道中のバスで、帰省中の大学生サクラコと出会う。
閉所恐怖症の彼女は、玲子に人懐っこく気さくに話しかける。

 

4.はらいそ

 

浩太郎は不動産屋に勤める25歳。趣味、ゲーム。
オンラインゲームのチャットの中での親友、ヨシノ。

顔を合わせたことはないが、画面上の付き合いはかれこれ5年以上。
ある日、ヨシノから恋の相談をされる。
今度初めて男性の家に遊びに行くことになったのだけれど、それってつまり、そういうことなの?

これまで他愛のない会話だけだったのに、不意に思春期の話題を振られ、5歳年上の浩太郎は戸惑う。

少し間を空け、いかにも経験値高い風に見せた、当たり障りのないアドバイスを画面に打ち込む。

 

ヨシノは、浩太郎が童貞なことを知らない…

 

5.やわらかい骨

 

中学生の津村小春は、転向してきた葵のことが気になる。

葵は必ず、手を十字に動かしてお祈りをしてから、食事に手をつける。

その様子から、葵はクラス中で浮いた存在となる。

小春は、そんな葵に対して少しずつ距離を縮めていくが、やはり最後にどこか、胸のつっぱりを感じる。

完全には理解出来ない、それぞれの価値観の違いに、戸惑う。
母なし子として育てられた自らの境遇とも重ね合わせ、模索していく。

 

 

という感じの5編からなる作品です。

 

 

この作品全体を通してのテーマが、

喪失。

妻の喪失。
恩師の喪失。
童貞の喪失。笑

作者の彩瀬まるさんは、インタビューで、大きな喪失よりも、「日常の喪失」を描きたいと言っておられたのが印象的でした。

「被災してまもない時期だったので、震災のことを書くのは難しいと思いました。それに被災した時にお世話になった方々とお会いして話していると、津波でごっそりもっていかれてしまった喪失も辛いけれど、それと同時に日常の細かなことの喪失も辛いんだな、と感じられて。生活感が強いもののほうに、自分の興味が向いていた時期でした」

from BOOK SHOPSより引用

 

また、喪失というテーマと同様に頻繁に登場する、「骨」という言葉。

 

自らを形成する、土台となる「骨」

生きていく為には欠かすことの出来ない、伴侶としての「骨」

それぞれの作品の人物が捉えた「骨」という言葉に、重みを感じます。

 

 

なんですが、、、!

短編集と見せかけておいて、実はひとつのストーリーになってるんです!

 

そう、このお話にはちょっとしたトリックが隠されてます。
(トリックではないか)

 

各話に出てくる脇役の登場人物が、次の話でも登場します!

※ここからは若干ネタバレになります

 

 

登場人物紹介(ネタバレ)

 

<指のたよりに>

津村   都心近く小さな不動産事務所を営む。大手不動産会社とフランチャイズ契約。

妻 朝子 10年前に大腸がんで亡くなる。享年29歳。

娘 小春 中学1年生。クールで、どこか冷めたさを感じる。

相川光恵  弁当屋の店員、32歳。2年前夫と別れ、津村といい感じの関係になりつつある。

<古世代のバームロール>

光恵   玲子、美鈴と三人で恩師の葬儀を計画。

玲子   友人。銀座で高級腕時計を扱うショップのオーナー。隙のない優等生。

美鈴   友人。看護師主任。甘い物腰で男子に人気があった。

磯貝真紀子 光恵とは高2の時同級生で、仲が良かった。現在はいかがわしい悪徳エステティシャンに。

<ばらばら>

須藤玲子  夫と子供たちを残して仙台にひとり旅。

夫 正浩

エガワサクラコ  東京の薬科大学の学生。仙台行きの深夜バスで玲子の隣の席になる。

<はらいそ>

槌田浩太郎   都内の不動産屋に勤める25歳。

ヨシノ(エガワサクラコ) 薬科大学生。中2のときに不登校になる。そのとき以来、オンラインゲームチャットで浩太郎と交流を続けている。

<やわらかい骨>

津村小春  中学2年生、バスケ部。1年の時から同じクラスの友花と仲良し。3歳の時母親と死別の父子家庭。

父 成久  不動産事務所を営む。

塚本葵   新学期からの転校生。両親が教団に勤める関係で昼食時に十字架を切ることで周囲と孤立する。

 

黄色の線が引いてる人物が、次の話題で登場します。

1話目の主人公の娘の小春が、ラストで主人公になるというちょっと嬉しい構成。

 

まとめ

 

全体的に重たい雰囲気がある小説です。
ハッピーエンド!で終わるという感じでもありません。

でも、日常だって、ハッピーエンド!なんてことはめったにないと思います

自分がハッピーでも、他の誰かはハッピーじゃなかったり。

まぁ70点くらいの、「よしとするか」と納得させるような結末になったり。

 

白か黒かの、2色だけの世界なんてつまらないですもんね。

 

すごく現実と向き合い、リアルな心情の揺れ動く様を描いた、彩瀬まるさんの「骨を彩る」

ぜひご一読を。

 

最後に、とても綺麗で心に響いた文を引用して終わります。

 

2.「ばらばら」より、玲子と夫との会話のシーン。

玲子の母が再婚であることも、岳志が実の父ではないことも、夫は既に知っている。けれどなぜ実父の墓に行こうと思うのか、うまく説明出来る気がしなかったので、ただ「仙台に行ってくる」とだけ伝えてきた。

そうか、と柔らかい相づちが返り、円の描き始めと終わりが繫がるように、ゆるやかに会話が絶えた。

読書はKindleで。

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jikuasi

じくあし。奈良に生息する手長族。哲学者。 月間30万POアルク収益20万円超の社畜を脱出し、エンジニアの道を進む。ブロガー界一の卓球の腕前。哲学に勤しんだ故の絶妙に無責任かつ奔放な文章力に定評あり。オンラインウクレレ講師業も好評中。 更新情報、おもしろネタ等ツイート中!