こんにちは、jikuasiです。
本日ご紹介する一冊はこちら!
時をかけるゆとり (文春文庫)
朝井 リョウ 文藝春秋 2014-12-04
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史上最年少直木賞受賞作『桐島、部活やめるってよ』でおなじみの朝井リョウ氏のエッセイ。
今、『何者』が実写化されて絶賛公開中ですね。リョウ君絶好調!
何者 (新潮文庫)
朝井 リョウ 新潮社 2015-06-26
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会社員をしながら、朝4時に起きて執筆活動に勤しむというスーパーマン。私にはそんな芸当とても真似できたものじゃありません。
同世代でして、一方的に意識をしている存在であります。友達になりたい。
で、今作はいつもの小説とは違う彼自身のエッセイなのですが、とにかく、おもろい。
何がおもろいのか考察してみました。
1、洞察力
著者の作品全般に共通して言える、鋭い人間の観察力、洞察力。もちろんエッセイとなってもその力は健在。
どうして病院の受付のお姉さんというのは若干冷たいのだろう。受付で正直に「保険証を忘れたみたいです」と告げると、バカかお前はという顔をされたのち、別の日に保険証と領収書を持ってきてくれればいいと説明をされ、診察室に通された。
いや、絶対にお姉さん「バカかお前はなんて」思ってないって!
と、わたしは思いますが、彼の世界では本当にそのように思われ、口に出してまでいてそうなリアルな情景がひしひしと伝わってきます。
2、言い回し
小説の作品ではあまり見られない、コミカルな言い回しがテンポ良く響き渡ります。
「ポイントカードにイラストを書きますよ。何でも言ってください!」爽やかボーイは白い歯を覗かせてそう言った。女子プロが、「じゃあ猫で」等と全くプロを感じさせない退屈な返答をかましていたので、私は彼女を指差して言った。「この子の似顔絵を描いてください」
―パッと爽やかボーイが爽やか笑顔で見せてきたポイントカードには、巨匠の抽象画のようなたいへん抽象的な作品があった。
ひとつの言葉に修飾語がたくさんついていて(どれもくだらない)文章がとても長いのですが、なぜかリズム感があって軽快に読み進められる。
森見登見彦さんを思わせるような文体です。(森見さんのはより語彙に富んでいて、漢字も多くコムズカシイことをだらだらと書き連ねる、という手法です。だがそこがいい。)
3、直喩→暗喩のコンボ
100キロハイクとは[二日間かけて埼玉県本庄市から早稲田大学まで歩き通す]というドM行事である。「人生最大の過酷さを体験できる、ともっぱらの評判だが、参加者は抽選制度を設けたところで毎年千人を超すらしい。この大学にはそんなにも多くの真性マゾヒストが眠っているのだ。抽選に漏れたマゾヒスト達は何をしてその鬱憤を晴らすのだろうか。よくない想像がふくらむ。
すみません、上の引用は暗喩→暗喩でしたw
まぁとにかく例えが上手!その場面ごとに「これ!」としか言いようのない表現をピシャリと合わせてきます。クスっときます。
上に挙げたような点が非常にうまいなぁ~と思いました。
そして私自身、”人を惹きつける文章を書く”という点で非常に参考になりました。これからちょっと真似していこうかな。
エピソード自体は大したものじゃないものもあるのですが、たとえば巻頭の1話なんて、
「お腹が弱い→バスに乗る直前でトイレに行きたくなる→民家でトイレを借りる→バス待っててくれた」
ていうだけのどこにでもありそうな話なんですが、実に巧妙な話術(記述?)で笑わされました。
amazonのレビューでも書かれていましたが、電車の中で読むのはやめておいた方がよいです。
時をかけるゆとり (文春文庫)
朝井 リョウ 文藝春秋 2014-12-04
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